こどもの歯並びに悩む親御さん必見!小児矯正のメリットと注意点
2023年05月21日(日)
こんにちは。東京都八王子市にある歯医者「相沢歯科」です。
こどもの歯並びが悪いと不安になる方も多いのではないでしょうか。歯が生えかわる時期は、一時的に歯並びが悪くなることもありますが、受け口や出っ歯、歯がガタガタしている場合は、矯正を行ったほうがよい場合もあります。
今回は、こどもの歯並びを治す小児矯正のメリットと注意点について解説します。
こどもの悪い歯並びの種類
歯並びにはさまざまな種類があり、それぞれに名称があることをご存じでしょうか。こどもの悪い歯並びについて、種類別に特徴を確認しましょう。
叢生:ガタガタした歯並び
「叢生(そうせい)」とは、歯並びが不規則な状態や、歯が重なり合う状態の歯並びのことです。乱ぐい歯や八重歯も叢生の一種とされています。厚生労働省の調査によれば、日本人の約40%が叢生という報告があるほど、多くの方が悩まされている歯並びです。
叢生が起きる原因はいくつかあります。まず、骨格的な遺伝により、顎の大きさに対して歯が大きすぎる、または歯の大きさに大して顎が小さいなどのケースが挙げられるでしょう。
また、乳歯が早く抜けてしまうと、永久歯が生えるスペースが確保できず、歯が本来生えるべき位置から移動してしまうこともあります。指しゃぶりや舌を前に押し出す癖などの口腔習癖も叢生の一因といえるでしょう。
叢生は、歯並びの不規則さからプラーク(歯垢)が溜まりやすく、歯ブラシが届きにくいため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。歯が生えるスペースがない場合、新たな永久歯が歯茎を突き破って横から生えてくることもあり、口腔内を自分の歯で傷つけてしまう可能性もあるのです。
上顎前突:出っ歯
上顎前突(じょうがくぜんとつ)は、一般的に「出っ歯」とよばれ、上の前歯が前方に傾斜している、または上の歯並び全体が前に出ている状態です。
原因としては、骨格的な遺伝が挙げられます。上下の顎の発達がアンバランスな場合や、下唇を噛む癖、口呼吸によって口元の筋肉の発達が未熟なこと、舌を前に押し出す癖、指しゃぶりなどが原因となることも知られています。
特に口呼吸の場合、顎が常に開いた状態です。通常は上顎の下に位置するはずの舌の位置が定まらず、唇を閉じる力も使われないため、口元の筋肉が緩みます。口内の筋肉が正常に発達せず、歯が前に押し出される力に負け、上顎前突が進行するのです。
上顎前突の状態では、食べ物を前歯で噛みにくいことや、発音が不明瞭になることが多いといわれています。
下顎前突:受け口
下の前歯が斜めに飛び出ていたり、下の歯全体が前に出ていたりする状態が下顎前突(かがくぜんとつ)です。「反対咬合(はんたいこうごう)」ともよばれます。乳幼児の段階で受け口が目立つ場合、下顎前突の可能性が高いです。
下顎前突の主な原因は、遺伝的な骨格の特性が挙げられます。下顎が大きい、上顎が小さい、上の前歯が内側に傾斜している、歯の萌出方向に問題があるなどです。下顎を突き出す癖や、口呼吸の癖により舌の位置が不安定になり、下の歯を押してしまうことも原因となります。
下顎前突を矯正しないでいると、食べ物を前歯で噛むのが難しくなる、発音が不明瞭になるなどの問題が起こりやすいです。さらに、顎関節症のリスクも高まります。
正中離開:すきっ歯
正中離開(せいちゅうりかい)は、前歯にすき間ができている状態を指し、一般的にはすきっ歯とよばれます。特にこどもの歯並びによく見られる現象です。
上唇小帯という唇と前歯の真ん中をつなぐヒダが先天的に大きく、前歯の間に入り込むことで正中離開が起きます。また、余分な永久歯(過剰歯)が前歯の間に埋まっている、永久歯の本数が少ない、歯そのものが小さいなどが原因の場合もあるでしょう。舌で前歯を押す癖がある人や、顎の成長が不十分な人も、すきっ歯になりやすいです。
すきっ歯の状態は、食べ物が歯の間に挟まりやすく、虫歯や歯周病になるリスクが高まります。歯の間から空気が漏れることで、発音が不明瞭になる方も多いです。
過蓋咬合:深い噛み合わせ
過蓋咬合(かがいこうごう)またはディープバイトは、上下の歯を噛み合わせたときに上の前歯が下の歯を覆い隠す状態のことをいいます。噛むたびに下の前歯が上の歯茎に当たることで、歯茎が傷つく方もいるため改善したほうがよいでしょう。
過蓋咬合の原因は、遺伝的な骨格が関係しています。下顎が上顎に対して過剰に後方に位置する場合や、噛む力によって奥歯が沈んだり成長しなかったりする場合などが該当します。強く噛み締める癖や下唇を噛む癖も、過蓋咬合の原因といえるでしょう。
過蓋咬合を放置すると、下の歯が継続的に上の歯茎に触れ、歯茎を慢性的に傷つける可能性があります。顎が後方へ押される力がかかり、強い負担となって顎関節症を引き起こすこともあります。
交叉咬合:噛み合わせのズレ
交叉咬合(こうさこうごう)は、通常なら上の歯に隠れるはずの下の歯が、片方だけ前に出ていたり、全体的に噛み合わせがずれていたりする状態のことです。クロスバイトともよばれます。
骨格的な遺伝により、上下の顎の位置が不均等であることや、食事の際に片側の顎ばかりを使うこと、頬杖をつく癖などが原因と考えられています。舌で歯を押す癖も、交叉咬合を引き起こす要因です。
交叉咬合の状態では、食べ物を効率的に噛み砕くことが難しく、消化不良を引き起こす場合があります。また、顎関節に不必要な負担がかかるため、顎関節症になるリスクも高まるのです。
開咬:上下の前歯に隙間
開咬(かいこう)とは、奥歯を噛み合わせたときに上下の前歯にすき間ができる状態のことを指し、オープンバイトともよばれます。
長期間の指しゃぶりやおしゃぶりの使用、前歯のすき間から舌を出す癖、口呼吸により口内の筋肉が弱まること、爪を噛む癖などが原因として挙げられます。
開咬の状態は、前歯でうまく噛めないため、奥歯への負担が大きいです。奥歯の欠けや削れ、顎関節症などを引き起こす原因にもなります。また、発音が不明瞭になりやすいともされています。
こどもの歯並びが悪くなる原因
こどもの歯並びが悪くなる原因は主に「遺伝」「虫歯」「日常における癖」です。それぞれ詳しく解説します。
遺伝
両親の歯並びが悪い場合、例えば出っ歯や受け口などは、こどもに遺伝する可能性があります。骨格や筋肉の形状は遺伝的に決まりやすく、親から子へと顎の形や噛み癖による筋肉の発達パターンが引き継がれるためです。
特に、受け口は遺伝性が高いとされています。成長期に入ると、身長が伸びると同時に下顎も発達し、徐々に受け口になるこどもがいます。
成長とともに歯並びが変化することは自然な現象ですが、歯並びに問題が見られる場合は早めに歯科医院に相談することが大切です。
虫歯
虫歯は、歯並びに影響を与える可能性があります。特にこどもの場合、乳歯の歯の質が軟らかいため、虫歯が発生しやすく進行も早いことが特徴です。放置すると、虫歯が歯の根まで広がり、次に生えてくる永久歯にも影響を与えます。
虫歯による痛みを避けるために片側の歯ばかりを使用して噛むようになると、顎や筋肉の発達にも悪影響を及ぼす可能性があります。「乳歯は永久歯に生えかわるから虫歯になっても大丈夫」という考えは誤りです。
虫歯の疑いがある場合は、早期に歯科医院を受診し、適切なケアを受けましょう。
日常おける癖
日常における癖とは、口呼吸や舌で前歯の裏を押す癖などです。歯に過度な負担がかかりることで顎の発育不足を引き起こし、歯並びが悪くなる可能性があります。指しゃぶりや唇を噛む癖なども、歯並びに悪影響をもたらす可能性が高いです。
癖は無意識に行っていることが多く、自覚しにくいため、定期的な口腔内のチェックが必要です。場合によっては、専門家の指導が必要となるでしょう。
こどもの歯並びが悪いままだと
こどもの歯並びが悪いままだと、発音に支障が出る、見た目に自信が持てないなどの問題が起きる場合があります。ほかにも、虫歯や歯周病、顎関節症などになるリスクも高いです。
発音に支障が出る可能性がある
歯並びの悪さは、こどもの発音に影響を及ぼすことがあります。すきっ歯や受け口では、正確な発音ができない場合があります。
すきっ歯の場合、すき間から空気が漏れ出し、空気が混ざった発音になることが多いです。特に、イ段の音(い・き・し・ちなど)の発音は難しく、同じように聞こえてしまうこともあります。
受け口の場合は舌が正常な位置に収まらないため、サ行やタ行の発音が不明瞭になることが多いです。
虫歯や歯周病になりやすい
歯並びが整っていないと、虫歯や歯周病のリスクが高まります。叢生のように歯と歯が重なり合う部分には、歯ブラシがうまく届かず、磨き残しが増えます。磨き残しは口腔内の細菌を増加させ、歯や歯肉の病気を引き起こす原因となるでしょう。
こどもの頃から虫歯や歯周病を繰り返すと、歯の寿命も短くなります。虫歯や歯周病は進行すると歯を抜かざるを得なくなり、入れ歯を必要とする生活に移行する可能性もあるでしょう。
歯並びを正すことは、美しい笑顔を手に入れるだけでなく、口腔内の健康維持にも大きく影響します。
顎関節症を発症するリスクが高くなる
歯並びの悪さを放置すると、将来的に顎関節症になるリスクが高まるといわれています。顎関節症とは、顎を動かす際に音が出る、あるいは痛みを感じる疾患です。
歯並びと顎関節は密接に連動しているため、歯の噛み合わせが正しくない状態で顎を動かすと、顎関節や周囲の筋肉に負担がかかります。長期間にわたって負担がかかると、顎関節症を引き起こすのです。
顎関節症が悪化すると、顎関節の内部に位置する関節円板の位置がずれてしまい、口が開けられなくなる症状が出ることもあります。
見た目に自信が持てなくなる
歯並びが整っていないことで自分の見た目に自信が持てず、性格や行動に影響する場合があります。笑う際に口を手で覆うこどもを見かけたことがある方もいるでしょう。「歯並びが変だと笑われたらどうしよう」「自分の歯並びは友達と違って恥ずかしい」などの不安が原因となっている可能性もあります。
自己肯定感の低下は、特に幼少期や思春期に大きな影響を及ぼします。自己表現がうまくできなくなったり、消極的な性格になったりする場合があるのです。
小児矯正のメリット・デメリット
小児矯正には歯並びを改善するメリットがある反面、デメリットもいくつかあります。
メリット
小児矯正を行うメリットは、以下のとおりです。
- 抜歯の可能性が減る
- 顎の成長をコントロールできる
- 全体的な矯正期間が短くなる
- 見た目に自信が持てる
小児矯正は、歯並びを整える、顎の成長をサポートするための矯正治療で、さまざまなメリットがあります。
早めに治療を開始することで、歯並びの悪さが重度になるリスクを減らし、抜歯の可能性を大幅に減らすことができます。
また、成長途中のこどものうちに矯正治療を行うことで、顎の成長を適切にコントロールし、顎の成長とともに歯並びを整えることが可能です。そのため、小児矯正をせず大人になってから矯正治療を受ける場合と比較し、矯正期間が短くなる可能性があります。
歯並びが整うことで、こどもたちは自分の見た目に自信をもつことができるでしょう。
デメリット
小児矯正を行うデメリットは、以下のとおりです。
- 一時的に見た目が悪くなる
- 矯正期間が長くなる可能性がある
- 虫歯になりやすい
- 大人になってから再治療が必要な場合がある
小児矯正治療には、多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。
大きなデメリットに、一時的に見た目が悪くなることが挙げられるでしょう。矯正装置が目立ったり、治療の過程で一時的に歯並びが悪くなる可能性も考えられます。
ワイヤー矯正では、歯に装着する装置に食べ物が詰まりやすく、歯ブラシが届きにくいため、虫歯になりやすいです。また、矯正治療が終了しても、歯や顎の成長により再度矯正が必要になることもあります。
小児矯正は何歳から始められる?
小児矯正は、一般的に6~7歳頃から開始するのが理想的とされています。乳歯から永久歯への生えかわりが始まる年齢であり、乳歯と永久歯が混在する時期が矯正治療の最適な時期とされているからです。
歯並びの問題に早期に対処することで、永久歯が完全に生え揃う前に歯の位置を誘導することができます。
小児矯正の注意点
小児矯正を受ける場合、治療中に注意しなければならない点がいくつかあります。以下に詳しく解説します。
食事の内容に注意する
矯正中は、食事の内容に気を付けなければなりません。硬い食べ物や粘着性のある食べ物などは、特に注意が必要です。例えば、おせんべい、ガム、キャラメル、お餅などは、矯正装置に引っ掛かりやすく、装置が外れてしまうリスクがあります。
しかし、こどもにとって食事は楽しみの一つでもあります。少なからず矯正中にはストレスを抱えることから、完全に制限することは望ましくありません。硬いものは細かく切るなど、工夫することでリスクを抑えながら食事をとることができます。
また、矯正治療中は食べ物が装置に引っ掛かり、食べかすが残りやすいです。特に、糖分が多く含まれる食べ物は虫歯のリスクを増大させます。こまめなブラッシングで清潔に保つことが大切ですが、矯正治療中は虫歯リスクが高いことを理解し、糖分の多い飲食物を制限することも重要です。
こどもの場合、学校帰りや習い事の合間のおやつなどが虫歯のリスクを高めます。外出先でブラッシングが十分にできない場合は、間食も考慮して虫歯になりにくいものを選ぶなど、親が気をつけてサポートすることが求められるでしょう。
徹底した歯磨きが必要になる
歯科医院で提供される矯正中のオーラルケアの指導は、こどもだけでなく親も理解し、補助することが大切です。
こどもは、大人と比べて手先の器用さや自己ケアの意識が十分ではないため、親が仕上げ磨きを行うなど、積極的にこどものオーラルケアに関わる必要があります。
歯磨きを丁寧に行うことで、矯正治療中の口腔衛生を保つことができ、虫歯になるリスクを最小限に抑えられます。
痛みが発生することがある
矯正装置をつけた直後の違和感は誰しも感じるものです。ほとんどの場合、時間が経つにつれて慣れて気にならなくなります。
しかし、口を動かすたびに装置が引っかかって痛みを感じる、口内に傷ができるなどの問題がある場合は、装置の調整が必要です。
歯を動かす際の痛みは避けられません。歯が動くときに感じる痛みは、大人、こどもを問わず起こります。歯が動き始めるときや噛みしめるときに感じる痛みは、通常2~3日で和らぐことが多いです。痛みが気になる場合は、痛み止めを服用することで痛みをコントロールするとよいでしょう。
歯に強烈な痛みや知覚過敏のような強いしみる感覚がある場合は、歯を動かす力の調整が必要な場合があります。痛みが強い場合や痛みが長引く場合は、早めに歯科医師に相談してください。
まとめ
こどもの悪い歯並びは、放置するとさまざまなリスクがあります。大人になってから矯正が必要になることもあります。小児矯正はお子さまに負担がかかりますが、早期に治療することは、全体的な治療期間の短縮や、歯並びの悪さによる虫歯・歯周病のリスクを低減できるのです。
小児矯正は永久歯が生えてから開始できます。お子さまの永久歯が生えてきて、歯並びや噛み合わせについて心配があるという方は、早めに歯科医師にご相談ください。
小児矯正を検討されている方は、東京都八王子市にある歯医者「相沢歯科」にお気軽にご相談ください。