歯牙移植とは?可能な条件や費用・メリット・デメリットを徹底解説
2024年09月07日(土)
こんにちは。東京都八王子市にある歯医者「相沢歯科」です。
歯牙移植という治療法を耳にしたことがないという方は多くいるでしょう。歯牙移植について知っておくことで今後の治療の選択肢が広がるかもしれません。また、どれくらいの費用がかかるのか、保険が適用されるのかも気になるところです。
本記事では、歯牙移植とはどのような治療法か詳しく解説します。メリットやデメリット、費用についても解説しますので、ぜひこの記事を参考にして歯牙移植についての知識を深めてください。
歯牙移植とは?
歯牙移植とは、虫歯や歯周病などによって歯を失った部分に違う歯を移し入れる方法のことです。歯牙移植のほとんどが、自身の歯を移植する自家歯牙移植です。
健康的な親知らずや歯の生え方が悪いことによって十分に活用されていない歯を移植します。
歯牙移植のメカニズム
自身の歯を抜いて、ほかの部位に移植する際に重要となるのが歯根膜です。歯根膜とは骨と歯をつなぐ組織で、再生能力の高い細胞が多く含まれています。この細胞は通常、特に機能していません。
しかし、歯牙移植などにより細胞が活発になると、通常の何倍もの勢いで増殖し、歯周組織を再生させて歯と顎の骨をつなげるのです。
歯牙移植の歴史
歯牙移植という言葉を聞きなれない人が多いこともあり「最近始まった治療法では?」と思う方も多いです。
しかし、歯牙移植は古くから行われている治療法です。当初は奥歯の虫歯に対して、顎の骨の中に埋まっている親知らずを移植したり、歯の根の病気を持つ歯を一旦抜いて治療後に同じ部分に移植したりしていました。
また、現在では行なってはいない他家歯牙移植も行われていました。他家歯牙移植とは、ほかの人の健康な歯を移植する方法で、現代では行えません。
歯牙移植が可能な条件
歯牙移植はどのようなケースでもできる治療ではなく、条件があります。歯牙移植が可能となる条件は、次の通りです。
移植する歯がある
歯牙移植は自身の歯を移植に使います。移植に使用できる自身の歯があることが第一条件です。移植する歯として候補になるのは健康的な親知らずと、噛み合わせに使用されていない歯です。
移植する歯に歯根膜がある
歯牙移植において歯根膜は非常に重要です。そのため、移植する歯があってもその歯に歯根膜がなければ移植はできません。歯周病になっていたり、歯の根元が虫歯になっていたりすると、歯根膜がなくなることがあります。
歯の根の形が単純である
歯の根の形が複雑だと抜歯をする際に歯根膜を傷つける可能性があります。歯根が1本で、くねくねと曲がっていない単純な形のものであれば歯牙移植可能です。
移植する部分と歯や根の形がマッチしている
移植する部分に歯や根の形がマッチしていることも条件です。例えば前歯に移植をするのに、奥歯の形をしている場合は形がマッチしているとは言えません。歯や根の形がマッチしていなければ、歯根膜があり、歯根が単純であったとしても移植はできません。
体調が整っている
歯牙移植をする場合には、歯を抜く・歯を移植するというさまざまな処置を行います。そのため体調が整っていることも条件のひとつです。
また、血液をサラサラにする薬を飲んでいたり、免疫を抑制する薬を飲んでいたりすると、移植中や移植後に体あるいは移植した歯に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、歯のコンディションが良くても歯牙移植を断られる可能性が高いです。
歯牙移植の費用
歯牙移植は保険が適用されます。費用は3割負担の場合で5,000円~1万円程度です。
しかし、保険が適用されるのは親知らずを移植する場合、また抜歯した当日に歯牙移植をする場合です。
この条件を満たせていない場合には自費診療となります。自費診療となった場合、費用は歯科医院によって異なりますが10万円前後です。
歯牙移植のメリット
歯牙移植をするならばメリットは必ずおさえておきたいものです。歯牙移植のメリットは、次の通りです。
自身の歯で自然な噛み心地にまで回復できる
歯牙移植最大のメリットは、自分自身の歯で自然な噛み心地を実現できることです。自身の歯を顎の骨に移植するため、入れ歯のようにずれたり、噛んだ際に違和感が起こったりと口の中が不安定な状態になることはありません。
親知らずや噛み合わせの悪い歯を有効利用して噛み心地を回復できます。
保険適用で欠損部を回復できる
自身の歯で自然な噛み心地を実現できるのは歯牙移植だけではありません。インプラントも人工の歯根であるインプラント体を顎の骨に埋入することから自然な噛み心地を実現できます。
しかし、インプラントは自費診療となるため、高額な費用がかかります。歯牙移植ならば条件を満たせば保険が適用されます。安い費用で欠損部分を回復できるという点は、費用に悩まされていた方にとっては大きなメリットといえるでしょう。
ほかの歯への影響がない
失った歯を補う治療法である入れ歯やブリッジの場合は、隣接する歯に金具をひっかけたり、歯を削ったりしなければなりません。ほかの健康な歯に負担がかかる点は、入れ歯やブリッジのデメリットといえるでしょう。
一方で歯牙移植の場合は、隣接する歯を削ったりひっかけたりする必要がありません。ほかの健康な歯への影響が少ない点は歯牙移植のメリットといえます。
矯正治療ができる
インプラント治療後は、矯正治療ができません。
しかし、歯牙移植後は矯正治療が可能です。全体の歯並びが気になるけれど、インプラントにしたことによって矯正治療を諦めていた方にとってはメリットといえるでしょう。
歯牙移植のデメリット
歯牙移植にはさまざまなメリットがありますが、治療を検討する際にはデメリットも理解しておきましょう。歯牙移植のデメリットは、以下の通りです。
条件を満たさないと治療が受けられない
上述のとおり、歯牙移植を受けるためには条件があります。条件を満たしていないと治療を受けられないという点はデメリットです。自身の口の中に歯牙移植可能な歯がなければ治療は受けられません。
10年生存率が低い
歯牙移植後の歯の生存率の調査によると推定平均残存年数は14.6年、10年生存率は73.6%ということがわかっています。インプラントの10~15 年の累積生存率が90%程度なので、インプラントと比較すると生存率は低いといえるでしょう。
治療できない歯科医院もある
歯牙移植は知識と技術が必要な治療法です。また、歯科医院に歯牙移植ができる機器が備わっている必要もあります。
どの歯科医院でも気軽に受けられる治療ではなく、場合によっては遠くまで交通費をかけて通院して治療を受けなければならないケースもあります。治療費以外に交通費がかかる可能性がある点はデメリットでしょう。
高齢者は治療を受けられない
歯牙移植は高齢になると成功率が下がると言われています。歯根膜がきちんと付着せずに脱落する可能性は若者でもありますが高齢になるとさらに高まるとされているのです。
抜歯や移植によって全身状態が不安定になるリスクも考慮して高齢者は治療を断られるかもしれません。
歯牙移植の流れ・期間
歯牙移植をしようと考えたら、まずは歯科医院を受診してカウンセリングを受けます。その後検査と治療計画の説明を受け、納得できたら治療開始となります。不安なことやわからないことがある場合は、治療計画の説明の時点ですべて聞いておきましょう。
治療開始となったら、抜歯と移植を同日に行い、移植した歯が動かないように固定します。とくに保険適用で治療をしたい場合には同日に治療をしなければなりません。
移植後は1週間ごとに歯科医院を受診して歯が顎の骨に固定されているかを確認します。とくに親知らずの場合、顎の骨に固定されるまで数週間かかることもあります。固定が確認できれば治療は終了です。ここまでの治療で一般的に3週間程度かかります。
根の成長が終了している歯を移植した場合には数週間後に根管治療を行い、補綴物を装着します。根管治療や補綴物の装着まで行う場合には治療開始から治療終了まで2~3カ月程度かかるでしょう。
まとめ
歯牙移植はあまり知られていない治療法ではありますが、ご自身の活用できていない歯を有効活用できることから失った歯を補いたい方にとってひとつの選択肢といえます。また、条件によっては保険が適用され、費用を抑えられるケースもあります。
一方ですべての方が受けられる治療ではありません。また、身体に大きな負担をかける点も知っておく必要があります。
歯牙移植をするメリットやデメリットをよく理解し、歯科医師と相談をしたうえで治療を検討してみてはいかがでしょうか。
歯牙移植を検討されている方は、東京都八王子市にある歯医者「相沢歯科」にお気軽にご相談ください。
当院では、小児歯科を中心に成人の一般歯科や矯正治療なども行っています。診療案内はこちら、ご予約も受け付けております。